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ガラス張りの2つの店舗が並ぶ様子。右側の店は賑わい、左側の店は閑散としている。公式ストアと代替ストアの利用状況の差を表すイメージ
ブログ事業者向け2026-09-11約10分

スマホ新法で「App Store以外」が解禁されて9か月。アプリ事業者がほとんど使っていない理由と、使うべきケース

対象読者: ゲーム以外のアプリ(予約・会員・サブスクリプション・講座・店舗など)を持っている、または作ろうとしている事業者の経営者・担当者

2025年12月18日に、スマホソフトウェア競争促進法(以下、スマホ新法)が全面施行されました。iPhone でも App Store 以外のアプリストアからアプリを入れられるようになり、アプリの中で Apple 以外の決済を使うことや、自社サイトの購入ページへ案内することも認められました。

施行の前後には多くの報道がありました。一方で、自社のアプリを実際に切り替えたという話は、あまり聞きません。

数字で見ても同じです。業界団体の調査では、施行から約8か月の時点で、代替アプリストアを使っているアプリ事業者は 5.9%、アプリの中で別の決済を使っている事業者は 8.8% でした。9割以上の事業者が、これまでどおり App Store と Google Play を使っています。

この記事では、スマホ新法でアプリ事業者に開かれた選択肢を整理し、使われていない理由を手数料と条件から説明します。そのうえで、それでも使う価値がある事業者の条件と、多くの事業者にとって現実的な選択肢をまとめます。

想定しているのは、ゲーム以外のアプリを持っている、または作ろうとしている事業者です。予約、会員証、サブスクリプション、オンライン講座、店舗のアプリなどが当てはまります。

スマホ新法でアプリ事業者に開かれた3つの選択肢

スマホ新法の施行に合わせて、Apple と Google は日本向けの仕組みを変えました。アプリ事業者から見ると、新しくできることは次の3つです。

1つ目は、代替アプリストアで配ることです。iOS 26.2 以降の iPhone では、App Store以外のアプリストア(代替アプリストア)からアプリを入れられます。代替アプリストアで配るアプリも、Apple の「公証」と呼ばれる確認を受けます。代替アプリストアで配ったアプリがデジタル商品を売った場合、開発者は Apple に 5% の手数料(コアテクノロジー手数料、CTC)を払います。

2つ目は、アプリの中で別の決済手段を使うことです。Apple のアプリ内課金を使わずに、決済代行会社などの決済をアプリに組み込めます。

3つ目は、アプリから自社サイトの購入ページへ案内することです。アプリの中にリンクを置き、購入は自社サイトで済ませてもらいます。

それぞれの手数料は次のとおりです。Apple は公式の開発者向けページ、Google は Play Console のヘルプに記載があります(2026年9月時点)。

方法Apple(標準)Apple(小規模事業者向けプログラム等)Google
標準のアプリ内課金26%(手数料21% + 決済手数料5%)15%(10% + 5%)15%(年間売上の最初の100万ドル分)、超えた分は30%
アプリ内で別の決済を使う21%10%標準から4ポイント引き下げ
自社サイトへ案内する15%10%20%(サブスクと最初の100万ドル分は10%)
代替アプリストアで配る5%(CTC)5%(CTC)
スマホ新法で増えた3つの選択肢と手数料(2026年9月時点)

Apple の「小規模事業者向けプログラム等」には、App Store Small Business Program、Mini Apps Partner Program、Video Partner Program の参加者が含まれます。自動更新のサブスクリプションも、2年目以降はこの率になります。

自社サイトへ案内した場合の手数料は、リンクを押してから一定期間内の購入にかかります。Apple は7日以内、Google は24時間以内です。

「別の決済を使う」「自社サイトへ案内する」の2つは、ストアへの手数料とは別に、決済代行会社の手数料がかかります。表の数字には含まれていません。

Google Play の手数料は、この表の後も変わる予定です。Google は新しい手数料体系を段階的に導入しており、日本は2026年9月30日から対象になります。新体系では、年間収益100万ドルまでは新規・既存インストールとも10%、それを超える分は新規インストール20%・既存インストール25%が基本になります(このほかに、購入時にGoogle Playの決済を使った場合の請求手数料が別途かかりますが、日本向けの率は本記事執筆時点でまだ公表されていません)。表の数字は2026年9月時点のものとしてご覧ください。

施行から8か月、使っている事業者は1割未満

モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)など、国内の業界団体8団体は、2026年8月26日に調査結果を公表しました。調査は2026年7月9日から8月7日に行われ、30社から34件の回答がありました。任意回答のため、8団体自身も、この結果がすべてのアプリ事業者の状況を示すものではないとしています。

質問利用している
代替アプリストアを利用しているかiOS・Android ともに 5.9%
アプリの中で代替決済を利用しているかiOS・Android ともに 8.8%
代替アプリストア・代替決済とも、利用は1割未満(MCF調査)

自社サイトの購入ページへ案内する「リンクアウト」は、スマホ新法の前から認められていた方法ですが、こちらの利用率も iOS 14.7%、Android 11.8% にとどまっています。

代替アプリストアの側も、数は増えています。公正取引委員会が2026年7月27日に公表したAppleの遵守報告書には、2026年3月31日時点で日本での配信が承認された代替アプリストアとして、AltStore、Aptoide、Onside、Epic Games、合同会社DMM.com(DMM GAMES STORE)、BBSSとの提携によるAptoide(App Arena)の6件が挙がっています。

このうち国内の事業者は2社です。DMM GAMES の「GAMES STORE」は、2026年8月31日に iPhone 版の提供を始めました。App Store を通さずに、DMM GAMES のゲームを iPhone で遊べるようにするものです。

この GAMES STORE はゲームのストアです。予約や会員証のような、日常の業務に使うアプリを代替アプリストアで配ったという話は、ほとんど聞きません。

使われていない3つの理由

MCF の調査では、代替アプリストアを利用しない理由として、手数料の負担、利用者の少なさ、導入や運用の負担が挙がりました。一つずつ見ていきます。

手数料を合計すると、ほとんど下がらない

月に100万円のデジタル商品を売るアプリで、試算します。決済代行会社の手数料は、国内の一般的な水準として 3.6% と仮定しています。実際の料率は、契約する会社や決済手段によって変わります。

小規模事業者向けプログラムに入っている場合(Apple の手数料が 10% の場合)は、次のとおりです。

方法月の手数料
Apple のアプリ内課金15万円(15%)
アプリ内で別の決済を使う13.6万円(10% + 3.6%)
自社サイトへ案内する13.6万円(10% + 3.6%)

差は月に1.4万円です。前年の収益(売上からAppleの手数料や一部の税を差し引いた額)が100万ドル(1ドル150円で換算すると約1.5億円)に届かない事業者や、App Store に新しく参加する事業者は、このプログラムに申し込んで参加できます。

一方で、別の決済を組み込むには開発が必要です。返金、問い合わせ、決済のトラブルへの対応も、Apple に任せていた部分を自社で持つことになります。月1.4万円の差で、この費用を回収できる事業者は多くありません。

標準の率(21%)が適用されている場合は、差が広がります。Apple のアプリ内課金の26万円に対して、アプリ内で別の決済を使うと24.6万円(21% + 3.6%)、自社サイトへ案内すると18.6万円です。アプリ内で別の決済を使う場合は、決済代行会社の手数料が高いと、かえってアプリ内課金より高くなることもあります。

自社サイトへの案内が、思ったほど自由にできない

3つの選択肢の中では、自社サイトへ案内する方法が、手数料の差が最も大きくなります。ところが、この方法も簡単ではありません。

Google では、アプリの中で自社サイトへのリンクを出す場合、Google Play の決済と並べて、利用者に選ばせる必要があります。Apple は、リンクを押してから7日以内の購入に手数料をかけます。自社サイトで買ってもらっても、手数料がゼロになるわけではありません。

さらに MCF によると、アプリの中で公式サイトなどへの購入を促すリンクや文言について、Apple と Google から指摘を受けた事業者のうち、Apple では9割、Google ではすべてのケースで、事業者がリンクを削除しました。案内の仕方の線引きがはっきりしないため、指摘を受けると消さざるを得ないのが実情です。

代替アプリストアには、まだ利用者がいない

代替アプリストアで配るには、利用者にそのストアのアプリを先に入れてもらう必要があります。iOS 26.2 以降に更新していることも条件です。App Store で検索すれば見つかる状態と比べると、利用者の手間は大きく増えます。

ストアを運営する側の条件も厳しく設定されています。Apple の開発者向けページによると、代替アプリストアを運営するには、次のどちらかを満たす必要があります。

  • 100万ドルの信用状を用意し、配信開始から少なくとも6か月維持する
  • Apple Developer Program に2年以上加入しており、前の年に全世界の iOS・iPadOS で初年度のインストールが100万を超えたアプリを持っている

この条件を満たせるのは、大手のゲーム会社やプラットフォーム事業者に限られます。先に挙げた6社の顔ぶれも、その結果です。自社のアプリだけを配るために代替アプリストアを立ち上げる、という使い方は、多くの事業者にとって現実的ではありません。

それでも使う価値がある事業者の条件

ここまでの理由を裏返すと、スマホ新法の選択肢を使う価値がある事業者の条件が見えてきます。

  • デジタル商品の売上が大きく、Apple の標準の率(21%)が適用されている。数ポイントの差でも、売上が大きければ金額の差になります
  • アプリの外で買ってもらう導線を、すでに持っている。会員サイト、メールマガジン、LINE 公式アカウントなどで、アプリの外でも顧客とつながっていれば、自社サイトへの案内が生きます
  • App Store の審査基準が、事業そのものの妨げになっている。DMM GAMES の GAMES STORE が扱う成人向けのゲームのように、App Store では配れない内容を届けたい場合は、代替アプリストアに意味があります

どれにも当てはまらない場合は、無理に切り替える必要はありません。開発と運用の費用をかけても、手数料の差で回収できない可能性が高いからです。

自社は使うべきかの判断フロー

多くの事業者にとっての、現実的な選択肢

物販・予約・サービスは、もともとアプリ内課金の対象外

そもそも、スマホ新法の手数料の話が関係するのは、デジタル商品やデジタルサービスを売るアプリです。

App Store の審査ガイドライン(3.1.3(e))には、アプリの外で使う物やサービスを売る場合、アプリ内課金以外の方法で支払いを受けなければならないと定められています。

If your app enables people to purchase physical goods or services that will be consumed outside of the app, you must use purchase methods other than in-app purchase to collect those payments, such as Apple Pay or traditional credit card entry.

店舗の商品の販売、飲食や美容の予約、来店して受けるサービスなどは、スマホ新法の前から、Apple や Google に手数料を払わずに決済できています。こうしたアプリにとって、スマホ新法で変わることはほとんどありません。

ストアの手数料を避けたいなら、作り方から考える

これからアプリを作る場合は、ストアを通すかどうかを、作り方の段階で決められます。

ブラウザで使う Web アプリであれば、App Store や Google Play の手数料はかかりません。利用者はアプリストアを経由せずに、URL から使い始められます。ホーム画面に追加すれば、アプリに近い使い勝手にもできます。

LINE ミニアプリは、LINE の中で動くアプリで、ストアからのインストールが要りません。ただし、LINE ミニアプリでデジタル商品を売るアプリ内課金は、App Store と Google Play の決済の仕組みを使います。手数料がなくなるわけではない点に注意が必要です。詳しくは「LINEミニアプリの課金手数料、7月に無料期間が終わりました。『アプリストアの30%を回避できる』は本当か」で説明しています。

どの作り方が合うかは、何を売るか、誰に使ってもらうかで変わります。ストアの手数料は、その判断材料の一つです。

まとめ

スマホ新法で、アプリ事業者の選択肢は確かに増えました。ただ、施行から8か月の時点で、代替アプリストアを使う事業者は 5.9%、アプリの中で別の決済を使う事業者は 8.8% にとどまっています。手数料を合計するとほとんど下がらないこと、自社サイトへの案内に制約があること、代替アプリストアに利用者がまだいないことが、その理由です。

自社が使うべきかどうかは、次の4点で判断できます。

  • 売っているのはデジタル商品か。物販・予約・サービスであれば、そもそも関係しません
  • Apple の手数料は21%か、10%か。小規模事業者向けプログラムの対象であれば、差は小さくなります
  • アプリの外で買ってもらう導線を、すでに持っているか
  • 切り替えにかかる開発・運用の費用を、手数料の差で回収できるか

Amanity では、iOS・Android のアプリ、Web アプリ、LINE ミニアプリの受託開発を行っています。課金の仕組みをどう設計するか、どの作り方にするかといった、開発前の段階からご相談いただけます。

出典